「このごろのベリーグッドのこと」

 私のページはなかなか変わらない。これは、ホームページとしては魅力に欠けるところかもしれない。覗くたびになにかしら変化しているということがないと、そう幾度もそのページを尋ねてみようという気にならないのが通例だからだ。それは分かっているのだけれど、生来筆無精で、身辺雑記ということにしてある「熊の生活」でさえ原稿を書くのはこれで3度目だ。
 今回は、新しく書き始めた「このごろのベリーグッド」のことに少し触れておきたくて、さぼりたくなる気持ちにむち打ってiMacの使いにくいというか癖の強いキーボードに向かうことにした。
 「ベリーグッドの町から」は、御覧いただけば分かるように、昔むかしの詩集で、当然のことながら50歳を過ぎた今の私にはずいぶん遠い世界になってしまっている。ところが、このページのデザインをしてくれている神戸恵美子さんが、この人は私の娘程の若さなのだが、いまの年令で1998年版のベリーグッドを書いたらどうなるのだろうかというようなアイデアをだしてくれた。
 自己模倣は一番嫌われることだけれど、20年も時間がたつと、模倣する程自分の当時の気持ちを覚えていないことに気がつき、ふたたび自分の作った町を訪れてみても面白いかなと思ったのが発端だった。今の所12篇だが、これからさらに数を増やして、町のこれまでとはちがう側面に光を当てていきたい。なにが出てくるかは、正直なところ本人にも分からない。キーボードに指をゆだねて、見えたものを書き次いでいきたい。
 余談になるが、20年前にはワープロでさえこの世のものではなかった。実験はされていたのだろうけれど、少なくとも事務所にも家庭にもなかった。さらにいえば、FAXももちろんなく、原稿のチェックを受けるためだけに東京から広島まで行ったりしたのも、ほぼ20年前のことだった。その当時には広告代理店にも自動車会社にもFAXがなかったのだ。
 いま、この原稿をメール添付で送ろうとしているのを考えると、時代が変わったことにびっくりする。つまり、そのぐらいむかしの自分が見た町を訪れようとしているわけで、勝手がさっぱり分からないところもある。調子はずれの所や気になるところ、あるいは感想などあったら、気軽にメールを入れていただきたい。アドレスはこの原稿の下の方、リンク先のさらに下に書いてあります。

1998年11月8日


くまの生活バックナンバー
●No.01「熊として、はじめに一言」
●No.02「事実としての熊の生活」
●No.03「このごろのベリーグッドのこと」
●No.04「ベリー・グッドの町起こし」
●No.05『「ああ」の周辺』のこと
●No.06 私はいつも本当のことが言えなくて
●No.07 未来についてどんな嘘がつけるのか
●No.08 曖昧な記憶と断片しかない過去
●No.09 床屋の政談
●No.10 横田さんの絵
●No.11 伊東日記

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